DAWでのミキシングが主流になってからは、トラックがモノラルなのかステレオなのか、あまり意識することがなくなってきました。

テープレコーダーの頃は、ステレオの場合2つトラックを使ってしまうので、録音する前にモノラルかステレオか、必ず考えなくてはいけなかったのですが、DAWではボタンひとつで切り替えできますし、どちらでも1トラックとして考えるため、あまり深く考えなくなってきたように思います。



今回は、この「無駄にステレオ化されたトラック」をモノにすることで情報量を減らして隙間を作るという技です。



まずは、ステレオとモノラルの信号の扱いを理解しておきましょう。



音楽作品を作る場合、ほぼステレオでマスターを作成しますね。
ステレオ環境におけるモノラルトラックとはどういうことでしょう?

モノラルトラックを、センターに定位させて再生する場合どうなっているか?

この場合は、左右のチャンネルに同じ大きさで信号が送られ、左右のスピーカーから全く同じ音が同じ音量で聞こえることによって、センターから音が聞こえます。正確には、センターから音が聞こえるように聞こえます


パンを振るとどうなるか?

この場合は、左右のスピーカーに送られる音量のバランスを変えることで、定位が変わったように聞こえるということになります。 これも先ほどと同様で、左右どちらかに寄った場所から音が聞こえるような気がする、という事です。

どちらも、再生しているデータ(音声信号)は1チャンネル分で、ミキサーに手渡すときに信号が分割(パラレル分配)されているという事になります。ミキサー以降にステレオ化されていることになりますね。ミキサー以降では、信号は2チャンネル分です。


次に、ステレオ音源の場合はどうでしょう。

ステレオの場合は、異なる音が2チャンネル分用意され、これがそれぞれのスピーカーに送られることになります。再生されている信号の部分から2チャンネル分ある、ということですね。
ステレオでは、左右それぞれに送った2つの信号の中身によって、左右スピーカーの間が補完されます。
なぜ左右の間という位置が表現できるかというと、これも左右チャンネルの音のバランスが関わっています。



ざっくり言うと、実際のところは左の音は左右にパラレルで送られつつ、基本的に右側からは出ないという状態なのです。右のチャンネルも同様です。


つまり、ステレオの場合はミキサーに入れる前からモノラルの2倍の情報量があり、かつ2倍の信号処理を行っているという事になります。



ミキシングは、たった2つの限られたトラックに、膨大な情報量をコントロールして詰め込んでいく作業でもあります。


従って、無駄な情報があると、本来聞かせたい情報の邪魔にしかならないわけです。


と、いうことで、長くなりましたが、ステレオの必要なない音源は、モノラルで扱いましょうというのがこのテクニックです。

理論的にはどうなのか賛否両論かもしれませんが、モノラル化を進めて行くと、何もしなくても音の隙間ができてきてミキシングしやすくなり、また、聞かせたいトラックを聞かせやすくなります。



どういったトラックがモノラル化できるか?


DAWのプラグインベースでやっていると、ほとんどのプラグインシンセはステレオ音として扱われています
プラグインシンセの場合、ミキシング作業前に録音(オーディオ化)した方がいい仕上がりになりますが、この時にモノラル化できるものをモノラル化します。


たとえばベース。シンセベースも同様です。

他にも一般的なアコースティック楽器類の音は、モノラルにしても大丈夫なものが多いです。

他にはリードシンセなどのリード系パート。
これは確実にモノラル化したほうが、立った音になります。



逆の視点で、モノラル化してはいけないトラックとはどういうものでしょう?

これは、そのトラックをモノラル/ステレオで切り替えてモニターしてみて、音に変化が現れるかどうかで見極めることが出来ます。ミキサー上で切り替えられると思いますので、切り替えてみてください。

ベースなどは変わりませんが、シンセサイザー系の音は結構変わってしまうものが多いです。(当然ですが)



これらを全部徹底的にモノラル化して、モノラルトラックとしてミキシングを進めてください。


プラグインシンセの場合は、多くのDAWでオーディオ化する機能があります。
これでオーディオ化するとたいていステレオにされます。

モノ化する方法としては、
・別のオーディオトラックを作りそこにモノラル出力し録音する
・ステレオオーディオ化されたトラックをモノラルにコンバートする
のふたつが考えられます。
やりやすい方でやってみてください。


もう一歩進んだテクニックとしては、表現としてステレオが必要かどうかを考えることもできます。


たとえば、アコースティックギターのバッキングを録音する際に、モノラルで録音することもステレオで録音することも出来ますよね。それぞれに長所がありますが、ステレオ録音の場合は広がりのある音に、モノラル録音の場合はピンポイントで定位するシンプルな音になります。


どちらがいいのか?ということになりますが、これは音楽やアレンジによって答えが変わってきます


ものすごくパートの多い楽曲では、モノラルで録音したほうが、結局後で良く聞こえます。

逆にパート数の少ない音楽では、ステレオで録音した方が全体のサウンドがリッチになります。パート数が少ない曲をモノラルばっかりで構成するとスカスカになって寂しいサウンドになってしまうのです。



今回のテクニックで最も重要なのは、このようにすべてのトラックに対してモノラルとステレオどちらが良いか考え、選択していくという部分です。


結構忘れがちですが、これだけで結構変わりますよ! 
ひとつひとつの音を考え、意味のない音を排除していくという工程が、最終的な仕上がりに大きな影響を与えます。意味のない情報は、マスターに入れてはいけない、という事ですね。

是非やってみてください。